附 録
一、国際反共連盟設立趣意
二、同 会 則
三、同 役 員
国際反共連盟設立趣意書
惟うに国体の精神的本質は、肇国以来生々躍動して一日も休むの時なく、ある時は破邪の利剣となり、ある時は顕正の明鏡となり、撥乱反正、時に応じ、世に従ひて千変万化に発動し、もって国運展開の原動力となれり。この心陵夷すれば国運遅々、この心旺勃すればすなわち国運大いに隆々、常に相影相伴いていやしくも離れず、皇運の無窮とともに今日に至り、日清、日露の義戦を経、満洲事変の揚武となり、八紘一宇の聖謨、ようやくその緒に就かんとせり。しかもこの時に当たりて世界は思想の大混乱に陥り、列国おのおのその類をもって団を造り、正邪沌迷、国内また国体精神を搣揺せんとする者あるに至る。嘆ずべきかな。古人言えり、十善を修せんよりは一悪を除くにしかずと。祭政の一致を説き、国体の明徴を期するもの、何ぞ一歩を進めて、内外の禍源たる化外蟠居の悪思想国に破邪の剣を振るうを忘るるや。けだし、百千の大学を設けて億劫の学徒に字義の明徴を教へんより、一個の極悪共産主義を世界より駆逐して、階級の闘争、同胞の相剋を除き、至善を理想とする国家群の間より、至悪を目的とする国家社会を一掃するの政治基調を築くは、これすなわち抜塞 [?] して大江を澄清ならしむる所以なればなり。
共産主義の極悪は世界列国の経験せるところなり。しかもその主義者の深刻なる、各国の政権争奪と労資征利との私欲に乗じてその間隙を窺い、西斑牙は今その惨禍のために煉獄の火焰裡にあり。また更にその遠大の計は、支那においてもその類を集め、機を見て再び反撃に移らんとするものなるは敢てここに説くを要せざるところなり。独逸は夙に共産主義のために殃せられ、その痛苦は骨を刺し、肉を剔ぐれり。故に目前の世界共産禍を眺めて憂憤措く能はず、東洋に同感のわが国を求め得て、遂に昨冬防共協定成立となれり。条章簡にして精神協定に過ぎざるの観ありといえども、意は深くして、東西相応じて世界の極悪共産主義に対する先鋒をもって自ら任ず。この趣旨を透徹して実際政治に導かば、東洋の諸難また氷雪の春風に消ゆるがごときものあらん。
帝国現前の諸政は、一切の活動力を共産主義絶滅の一事に集中せざるべからず。もしもそれこの大斾を掲げて滅共産の下に内外を振粛し来たらんか、義を愛し、正を好むの日本国民にして、誰か砂上に偶語する者あらんや。如是にして内に既に基礎を置くこと堅固ならんか、大小の国家また我が大義のあるところを諒となし、喜んで防共の目的を一にせんとするに至るや疑うべからず。これ真にまつろわぬものを伐ち平げて八紘一宇の大理想を顕揚するものと謂うべきなり。
国際反共連盟はかくのごとくにして同志の間にその議を発し、遂に興らざるを得ずして興りしものなり、言を換ふれば、口舌の国体明徴を一転して実行の国体明徴に移行し、其が為めに先づ内外共産主義の絶滅をもって破邪折伏の先行となさんがために新たに生れたるものなり。全国同感の士速に錦集雲会せんことを希ふ。
会 則
第一条 本会は国際反共連盟と称し、皇道の本義に基き人類共同の敵たる共産主義の絶滅を計ることをもって目的とす。
第二条 本会は前条の目的を達するため左の事業を行う。
一、日本精神の高揚に関する諸般の事項の研究
二、共産主義絶滅に関する国内的結束および国際的連繫に関する諸施設
三、満洲、支那その他亜細亜各地における反共産主義運動との協力
四、調査資料の出版ならびに頒布
五、研究会および講演会の開催
六、その他必要の事項
第三条 本会は本会の趣旨に賛同し入会したる会員をもって組織す。ただし入退会の規定は理事会の決議によりてこれを定む。
第四条 本会に左の役員を置く。
一、顧 問 若干名
二、会 長 一 名
三、理 事 長 一 名
四、理 事 若干名
五、評 議 員 若干名
六、幹事嘱託 若干名
第五条 会長、顧問および評議員は理事会において推選し、理事長は理事の互選とし、幹事、嘱託は理事会において選任す。
役員の任期は二ヶ年とす。ただし再任を妨げず。
第六条 会長は会務を総理す。顧問は会長の諮問に応ず。理事長および理事は会長を佐け会務を処理す。評議員は重要会務を審議し、幹事は理事を佐け実務に従事す。
第七条 本会は毎年一回総会を開く。
第八条 本会は東京に本部を置き、必要に応じ内外各地に支部を置く。
第九条 本会の経費は寄附金その他の収入をもってこれに充つ。
役 員
一、会 長
二、顧 問
平沼騏一郎 近 衛 文 麿 頭 山 満
田 中 光 顕 有 馬 良 橘
三、評 議 員
今 泉 定 助 石 光 真 臣 猪野毛利栄
井戸川辰三 花 岡 敏 夫 羽 入 三 郎
大 井 成 元 大 谷 尊 由 大山卯次郎
渡辺万太郎 田 中 善 立 田 中 都 吉
田鍋安之助 高 山 公 通 南 郷 次 郎
夏 秋 亀 一 牛塚寅太郎 上田仙太郎
内 田 良 平 野 中 勝 明 葛 生 能 久
山本悌二郎 山岡万之助 山 内 通 靖
松 岡 洋 右 松 岡 均 平 山 内 通 靖
松 岡 洋 右 松 岡 均 平 増 田 正 雄
松 永 材 二子石宮太郎 小 山 松 吉
五 來 欣 造 荒 木 貞 夫 有 田 八 郎
赤 池 濃 佐 藤 忍 匝 瑳 胤 次
坂 本 一 宮 田 光 雄 皆 川 治 廣
簑 田 駒 喜 四王天延孝 瀨 下 淸
關 重 忠 角 岡 知 良 末 永 一 三
内藤順太郎 中 原 謹 司
四、理 事
井田磐楠(理事長) 菊 池 武 夫 井 上 淸 純
入 江 種 矩 池 田 弘 岩田愛之助
太 田 耕 造
五、幹 事
高 畑 正 川原信一郎 青 山 憲 史
六、囑託
山 内 通 靖 藤 原 繁
附 錄
一、國際反共聯盟設立趣意
二、同 會 則
三、同 役 員
國際反共聯盟設立趣意書
惟ふに國體の精神的本質は、肇國以來生々躍動して一日も休むの時なく、或時は破邪の利劍となり、或時は顯正の明鏡となり、撥亂反正、時に應じ、世に從ひて千變萬化に發動し、以て國運展開の原動力となれり。此心陵夷すれば國運遲々、此心旺勃すれば乃ち國運大に隆々、常に相影相伴ひて苟も離れず、皇運の無窮と與に今日に至り、日淸、日露の義戰を經、滿洲事變の揚武となり、八紘一宇の聖謨漸く其の緖に就かんとせり。然かも此時に當りて世界は思想の大混亂に陥り、列國各其類を以て團を造り、正邪沌迷、國内又國體精神を搣搖せんとする者あるに至る。嘆ずべきかな。古人言へり、十善を修せんよりは一惡を除くに如かずと。祭政の一致を説き、國體の明徴を期するもの、何ぞ一歩を進めて、内外の禍源たる化外蟠居の惡思想國に破邪の劍を振ふを忘るるや。蓋し、百千の大學を設けて億劫の學徒に字義の明徴を敎へんより、一個の極惡共產主義を世界
より驅逐して、階級の鬪爭、同胞の相剋を除き、至善を理想とする國家群の間より、至惡を目的とする國家社會を一掃するの政治基調を築くは、是れ卽ち拔塞して大江を澄淸ならしむる所以なれば也。
共產主義の極惡は世界列國の經驗せるところなり。然かも其主義者の深刻なる、各國の政權爭奪と勞資征利との私慾に乘じて其間隙を窺ひ、西班牙は今其惨禍の爲めに煉獄の火焰裡にあり。又更に其遠大の計は、支那に於ても其類を集め、機を見て再び反擊に移らんとするものなるは敢て茲に說くを要せざるところなり。獨逸は夙に共產主義の爲めに殃せられ、其痛苦は骨を刺し、肉を剔ぐれり。故に目前の世界共產禍を眺めて憂憤措く能はず、東洋に同感の我國を求め得て、遂に昨冬防共協定成立となれり。條章簡にして精神協定に過ぎざるの觀ありと雖も、意は深くして、東西相應じて世界の極惡共產主義に對する先鋒を以つて自ら任ず。此趣旨を透徹して實際政治に導かば、東洋の諸難又氷雪の春風に消ゆるが如きものあらん。
帝國現前の諸政は、一切の活動力を共產主義絕滅の一事に集中せざるべからず。若も夫れ此の大斾を揭げて滅共產の下に内外を振肅し来らんか、義を愛し、正を好むの日本國民にして、誰か砂上に偶語する者あらんや。如是にして内に既に基礎を置くこと堅固ならんか、大小の國家又我大義のあるところを諒となし、喜んで防共の目的を一にせんとするに至るや疑ふべからず。是れ眞にまつろはぬものを伐ち平げて八紘一宇の大理想を顯揚するものと謂ふべき也。
國際反共聯盟は斯くの如くにして同士の間に其議を發し、遂に興らざるを得ずして興りしものなり、言を換ふれば、口舌の國體明徴を一轉して實行の國體明徴に移行し、其が爲に先づ内外共產主義の絕滅を以て破邪折伏の先行となさんが爲めに新たに生れたるものなり。全國同感の士速に錦集雲會せんことを希ふ。
會 則
第一條 本會ハ國際反共聯盟ト稱シ皇道ノ本義ニ基キ人類共同ノ敵タル共產主義ノ絕滅ヲ計ルコトヲ以テ目的トス
第二條 本會ハ前條ノ目的ヲ達スル爲メ左ノ事業ヲ行フ
一、日本精神ノ高揚ニ關スル諸般ノ事項ノ研究
二、共產主義絕滅ニ關スル國内的結束及國際的連繫ニ關スル諸施設
四、調査資料ノ出版並ニ頒布
五、研究會及講演會ノ開催
六、其他必要ノ事項
第三條 本會ハ本會ノ趣旨ニ賛同シ入会シタル會員ヲ以テ組織ス但シ入退會ノ規定ハ理
事會ノ決議ニ依リテ之ヲ定厶
第四條 本會ニ左ノ役員ヲ置ク
一、顧 問 若干名
二、會 長 一 名
三、理 事 長 一 名
四、理 事 若干名
五、評 議 員 若干名
六、幹事囑託 若干名
第五條 會長、顧問及評議員ハ理事會ニ於テ推選シ理事長ハ理事ノ互選トシ
幹事、囑託ハ理事會ニ於テ選任ス
役員ノ人気記事ハ二ヶ年トス但シ再任ヲ妨ケス
第六條 會長ハ會務ヲ總理ス、顧問ハ會長ノ諮問ニ應ス、理事長及理事ハ會長ヲ佐ケ會
務ヲ處理ス、評議員ハ重要會務ヲ審議シ、幹事ハ理事ヲ佐ケ實務ニ從事ス
第七條 本會ハ毎年一囘總會ヲ開ク
第八條 本會ハ東京ニ本部ヲ置キ必要ニ應シ内外各地ニ支部ヲ置ク
第九條 本會ノ経費ハ寄附金其他ノ收入ヲ以テ之ニ充ツ
役 員
一、會 長
二、顧 問
平沼騏一郎 近 衛 文 麿 頭 山 滿
田 中 光 顯 有 馬 良 橘
三、評 議 員
今 泉 定 助 石 光 眞 臣 猪野毛利榮
井戸川辰三 花 岡 敏 夫 羽 入 三 郎
大 井 成 元 大 谷 尊 由 大山卯次郎
渡邊萬太郎 田 中 善 立 田 中 都 吉
田鍋安之助 高 山 公 通 南 鄕 次 郎
夏 秋 龜 一 牛塚寅太郎 上田仙太郎
内 田 良 平 野 中 勝 明 葛 生 能 久
山本悌二郎 山岡萬之助
山 内 通 靖 松 岡 洋 右 松 岡 均 平
增 田 正 雄 松 永 材 二子石宮太郎
小 山 松 吉 五 來 欣 造 荒 木 貞 夫
有 田 八 郎 赤 池 濃 佐 藤 忍
匝 瑳 胤 次 坂 本 一 宮 田 光 雄
皆 川 治 廣 簑 田 駒 喜 四王天延孝
瀨 下 淸 關 重 忠 角 岡 知 良
末 永 一 三 内藤順太郎 中 原 謹 司
四、理 事
井田磐楠(理事長) 菊 池 武 夫 井 上 淸 純
入 江 種 矩 池 田 弘 岩田愛之助
太 田 耕 造
五、幹 事
高 畑 正 川原信一郎 青 山 憲 史
六、囑託
山 内 通 靖 藤 原 繁
山内封介 著『赤軍将校陰謀事件の真相 : スターリン暗黒政治の曝露』,国際反共聯盟調査部,昭和12. 国立国会図書館デジタルコレクション https://dl.ndl.go.jp/pid/1120546 (参照 2024-02-16)