【第五号】
政務官
書記官 回付(執行前) 【閲 兵役】
審案筆記者【藤井】【陸軍省/13. 1. 17/29/整備課】
保存期限:永久
決済指定:【次官委任】
決行指定:【櫛渕】
受領番号:【陸軍省受領/密受第 74 号】
起源庁(課名):徴募課
件名:朝鮮人志願兵問題に関する件
大臣:【委】
次官:【梅津】
高級副官:【櫛渕】 主務副官:【柏□】【岩永】 主務局長:【師□】 主務課長:【柳田】 主務課員:【印】
連帶 局(部)長:軍務【田口】 兵務【飯田】 整備【印】 課長:補任 代【印】 軍事【印】 軍務【印】 兵務【飯田】
陸密
朝鮮人志願兵問題等に関し、別紙第一の通り閣議においてこれを決定し、拓務大臣は総理大臣に代りて別紙第二の通り奏上せしにつき通牒す。
陸密第 35 号 昭和拾参年壱月十八日【印】【印】
別紙第一 【極秘】
今後の朝鮮統治に関し昭和十二年十二月二十四日閣議において決定せる事項 写
朝鮮人を同化融合し、皇国臣民たるの自覚を与へ、内鮮一体、東洋永遠の平和の基礎を固くするは朝鮮統治の大本にして、臣ら、夙夜恐惶として 聖旨に副ひ奉らむことを期しつつあり。
然るに国威顕揚に伴ひ満洲事変を楔機として饂醸せられたる内鮮一体の気運は、今次の支那事変に際会し澎湃として全鮮に漲るに至れり。
これひとへに歷世歴御稜威の賜にして、臣等まことに感激措ところを知らず。
このときにあたり朝鮮統治の大本をさらに明徴にし、朝鮮人心指導の根本方針を闡明するの要、切なるものあるを思ひ、ここに左記の施策を議し、よってもって朝鮮の日本化を促進し、朝鮮併合の 聖慮に副ひ奉らむとす。
「朝鮮統治の現況に関しては別に朝鮮総督より上奏す。」
記
一、朝鮮の学術教育を刷新し、半島在住国民をして皇国臣民たるの自覚と資質とを強化向上せしむ。
二、朝鮮人志願兵·生徒を採用し、内鮮一体の国防に寄与せしむ。
(ただしこれがため朝鮮人の参政権を拡張するの意志を有せず。)
三、神社崇敬の念を涵養してわが国体観念を明徴ならしめ、旧来の陋習を改め内地の良俗を採り、国語を普及し進んで思想の善導を図るなど、皇国臣民たるの意識を培養す。
四、半島在住内地人の増加定着を図り、その他内鮮融合を強化するため諸般の施策を講ず。
別紙第二【極秘】
昭和十二年十二月二十四日の閣議決定に基く拓務大臣上奏文 写
(昭和十三年一月十五日上奏)
臣尊由、朝鮮人心指導の根本方針につき謹みて奏上す。
朝鮮人を同化融合して、これに皇国臣民たるの自覚を与へ、内鮮一体、もって東洋永遠の平和の基礎を堅くすることは、朝鮮統治の大本にして、臣等、夙夜恐惶として常に 聖旨に副ひ奉らんことを期しつつあり。最近朝鮮における民心の動向は、国威の顕揚に伴ひますます静謐·堅実にして、ことに満洲事変を契機として醞醸せられたる内鮮一体の機運は、今次の支那事変に際しさらにその勢ひを加へ、朝鮮の蒼生はこぞって帝国の偉大なる実力とその世界における確固たる地位とを明かに認識し、ひとしく帝国臣民として愛国の誠を捧げ、多くの義挙美談を伝へ、銃後の熱意、内地に比し敢て遜色なく、今や真に内鮮渾然一体たるの実を具現しつつあるの状況なり。このことはひとへに 歴世御稜威の賜にして、臣ら、まことに感激措く能はざるところなり。
このときにあたりこの傾向を善導し、さらにこれを助長することは、一面、朝鮮衆庶の廉寧を増進すると同時に、多面、彼ら衆庶の稟質賦能を発揮せしめ帝国の人的資源を強化する所以の途にして、刻下の時局に鑑み、まことに緊急の責務と信ず。
よって朝鮮統治の大本をさらに明徴ににし、朝鮮人心指導の根本方針として次の方策を講じ、名実、朝鮮の日本化を促進し、朝鮮併合の 聖慮に副ひ奉らむとす。
一、朝鮮の学校教育を刷新して半島在住国民をして一層皇国臣民としての自覚と資質とを強化向上せしめんとす。
そもそも朝鮮における教育の本旨は一視同仁の根本義に基き、教育に関する 勅語の趣旨を遵奉して忠良なる国民を養成し、もって国運の進展を期するにありて、内地人たると朝鮮人たるとにより区別あるなし。ただ時勢と民度とに立脚し、これに適応する教育を施し、その効果の万全を計りたるものにして、即ち国語を常用する者と国語を常用せざる者との教育は、その言語習俗を異にするに鑑み、普通敎育において教育機関を異にし、また教育の内容において若干の差異を設けたり。しかるに朝鮮の現状に鑑み現行の制度に必要なる改正を加へ、これらの差異を撤廃するとともに、朝鮮人に対し真に帝国臣民たるの自覚信念を確固不抜に涵養するの訓練教育を施すのほか、一面、時宜に応じ教育機関の拡充を行ひ、もって朝鮮人をして勉めて教養の機会を多からしめ、皇国臣民たるの資質能力を向上せしめんとす。
二、朝鮮人志願兵制度を採用し、これなはより皇国臣民たるの鍛錬を加へ、内鮮一体の国防に寄与せしめんとす。しかして朝鮮人志願兵制度の実施は一に朝鮮人心の指導·誘掖の一施策たるものにして、これをもって朝鮮人に参政権拡張を云為することを許すものにはあらず。
三、朝鮮人に対し神社崇敬の念を涵養し、わが国体観念を明徴にし、旧来の陋習を改め内地の良俗を採り、国語を普及し進んで思想の善導を図らんとす。
四、一視同仁の 聖旨を奉じ内鮮融和の実を完からしめ同化を促進せしむるため、内地人の半島定着を増加せしめんとするものにして、これがため交通、文化、衛生等の施設の拡充、普及、産業各般の発展振興と相俟ち、内地人の知能、技術、労務をますます活用するの施策を実行し、ことに国防の強化に寄与する方途として除隊兵の現地就職につき適当なる措置を講ぜんとす。
朝鮮人心指導に関する大綱につき謹みて 聖聞に達す。なほ朝鮮統治の現況および本大綱の稍細目に関しては朝鮮総督より奏上せしむ。
【第五號】
政務官
書記官 囘付(執行前) 【閲兵役】
審案筆記者【藤井】【陸軍省/13. 1. 17/29/整備課】
保存期限:永久
決済指定:【次官委任】
決行指定:【櫛渕】
受領番号:【陸軍省受領/密受第七四號】
起源廳(課名):徴募課
件名:朝鮮人志願兵問題ニ関スル件
大臣:【委】
次官:【梅津】
高級副官:【櫛渕】 主務副官:【柏□】【岩永】 主務局長:【師□】 主務課長:【柳田】 主務課員:【印】
連帶 局(部)長:軍務【田口】 兵務【飯田】 整備【印】 課長:補任 代【印】 軍事【印】 軍務【印】 兵務【飯田】
大臣ヨリ参謀總長、敎育總監 及 朝鮮軍司令官宛 通牒案
陸密
朝鮮人志願兵問題等ニ関シ別紙第一ノ通閣議ニ於テ之ヲ決定シ 拓務大臣ハ總理大臣ニ代リテ 別紙第二ノ通 奏上セシニ付 通牒ス
陸密第三五號 昭和拾參年壹月十八日【印】【印】
別紙第一 【極秘】
今後ノ朝鮮統治ニ關シ昭和十二年十二月二十四日
閣議ニ於テ決定セル事項 寫
朝鮮人ヲ同化融合シ皇國臣民タルノ自覺ヲ與へ内鮮一體東洋永遠ノ平和ノ基礎ヲ固クスルハ朝鮮統治ノ大本ニシテ 臣等 夙夜恐惶トシテ 聖旨ニ副ヒ奉ラムコトヲ期シツツアリ
然ルニ國威顯揚ニ伴ヒ滿洲事變ヲ楔機トシテ饂釀セラレタル内鮮一體ノ氣運ハ今次ノ支那事變ニ際會シ澎湃トシテ全鮮ニ漲ルニ至レリ
是レ偏ニ歷世御稜威ノ賜ニシテ 臣等洵ニ感激措クトコロヲ知ラズ
此ノ秋ニ方リ朝鮮統治ノ大本ヲ更ニ明徴ニシ朝鮮人心指導ノ根本方針ヲ闡明スルノ要切ナルモノアルヲ思ヒ茲ニ左記ノ施策ヲ議シ依テ以テ朝鮮ノ日本化ヲ促進シ朝鮮併合ノ 聖慮ニ副ヒ奉ラムトス
「朝鮮統治ノ現況ニ關シテハ別ニ朝鮮總督ヨリ上奏ス」
記
一、朝鮮ノ學術敎育ヲ刷新シ半島在住國民ヲシテ皇國臣民タルノ自覺ト資質トヲ強化向上セシム
二、朝鮮人志願兵生徒ヲ採用シ内鮮一體ノ國防ニ寄與セシム
(但シ之カ爲朝鮮人ノ參政權ヲシテ擴張スルノ意志ヲ有セス)
三、神社崇敬ノ念ヲ涵養シテ我カ國體觀念ヲ明徴ナラシメ舊來ノ陋習ヲ改メ内地ノ良俗ヲ採リ國語ヲ普及シ進ンテ思想ノ善導ヲ圖ル等皇國臣民タルノ意識ヲ培養ス
四、半島在住内地人ノ增加定着ヲ圖リ其ノ他内鮮ノ融合ヲ強化スル爲諸般ノ施策ヲ講ス
別紙第二【極秘】
昭和十二年十二月二十四日ノ閣議決定ニ基ク
拓務大臣上奏文寫
(昭和十三年一月十五日上奏)
臣尊由 朝鮮人心指導ノ根本方針ニ付謹ミテ奏上ス
朝鮮人ヲ同化融合シテ、之ニ皇國臣民タルノ自覺ヲ與ヘ、内鮮一體以テ東洋永遠ノ平和ノ基礎ヲ堅クスルコトハ朝鮮統治ノ大本ニシテ、臣等 夙夜恐惶トシテ常ニ 聖旨ニ副ヒ奉ランコトヲ期シツツアリ。最近朝鮮ニ於ケル民心ノ動向ハ國威ノ顯揚ニ伴ヒ益々靜謐堅實ニシテ、殊ニ滿洲事變ヲ楔機トシテ、醞釀セラレタル内鮮一體ノ機運ハ今次ノ支那事變ニ際シ更ニ其ノ勢ヲ加ヘ朝鮮ノ蒼生ハ擧ツテ帝國ノ偉大ナル實力ト其ノ世界ニ於ケル確固タル地位トヲ明カニ認識シ均シク帝國臣民トシテ愛國ノ誠ヲ捧げ多クノ義擧美談ヲ傳ヘ銃後ノ熱
意内地ニ比シ敢テ遜色ナク今ヤ眞ニ内鮮渾然一體タルノ實ヲ具現シツツアルノ狀況ナリ。此ノ事ハ偏ニ 歷世御稜威ノ賜ニシテ 臣等 誠ニ感激措ク能ハザル所ナリ。
此ノ秋ニ方リ此ノ傾向ヲ善導シ、更ニ之ヲ助長スルコトハ一面朝鮮衆庶ノ廉寧ヲ增進スルト同時ニ多面彼等衆庶ノ稟質賦能ヲ發揮セシメ帝國ノ人的資源ヲ強化スル所以ノ途ニシテ刻下ノ時局ニ鑑ミ洵ニ緊急ノ責務ト信ズ。
仍テ朝鮮統治ノ大本ヲ更ニ明徴ニシ朝鮮人心指導ノ根本方針トシテ次ノ方策ヲ講ジ名實朝鮮ノ日本化ヲ促進シ、朝鮮併合ノ 聖慮ニ副
ヒ奉ラムトス。
一、朝鮮ノ學校敎育ヲ刷新シテ半島在住國民ヲシテ一層皇國臣民トシテノ自覺ト資質トヲ強化向上セシメントス。
抑モ朝鮮ニ於ケル敎育ノ本旨ハ一視同仁ノ根本義ニ基キ敎育ニ關スル 勅語ノ趣旨ヲ遵奉シテ忠良ナル國民ヲ養成シ以テ國運ノ進展ヲ期スルニアリテ内地人タルト朝鮮人タルトニ依リ区別アルナシ、唯時勢ト民度トニ立脚シ之ニ適應スル敎育ヲ施シ其ノ效果ノ萬全ヲ計リタルモノニシテ卽チ國語ヲ常用スル者ト國語ヲ常用セザル者トノ敎育ハ其ノ言語習俗ヲ異ニスルニ鑑ミ普通敎育ニ於テ敎
育機關ヲ異ニシ又敎育ノ内容ニ於テ若干ノ差異ヲ設ケタリ、然ルニ朝鮮ノ現狀ニ鑑ミ現行ノ制度ニ必要ナル改正ヲ加ヘ此等ノ差異ヲ撤廢スルト共ニ朝鮮人ニ對シ眞ニ帝國臣民タルノ自覺信念ヲ確固不拔ニ涵養スルノ訓練敎育ヲ施スノ外一面時宜ニ應ジ敎育機關ノ擴充ヲ行ヒ以テ朝鮮人ヲシテ勉メテ敎養ノ機會ヲ多カラシメ皇國臣民タルノ資質能力ヲ向上セシメントス。
二、朝鮮人志願兵制度ヲ採用シ之ニ依リ皇國臣民タルノ鍛錬ヲ加ヘ内鮮一體ノ國防ニ寄與セシメントス、而シテ朝鮮人志願兵制度ノ實施ハ一ニ朝鮮人心ノ指導誘掖ノ一施策タルモノニシテ之ヲ以テ朝
鮮人ニ參政權擴張ヲ云爲スルコトヲ許スモノニハ非ズ。
三、朝鮮人ニ對シ神社崇敬ノ念ヲ涵養シ我國體觀念ヲ明徴ニシ舊來ノ陋習ヲ改メ内地ノ良俗ヲ採リ國語ヲ普及シ進ンデ思想ノ善導ヲ圖ラントス。
四、一視同仁ノ 聖旨ヲ奉ジ内鮮融和ノ實ヲ完カラシメ同化ヲ促進セシムル爲内地人ノ半島定着ヲ增加セシメントスルモノニシテ之ガ爲交通、文化、衞生等ノ施設ノ擴充、普及、產業各般ノ發展振興ト相俟チ内地人ノ智能、技術、勞務ヲ益々活用スルノ施策ヲ實行シ殊ニ國防ノ強化ニ寄與スル方途トシテ除隊兵ノ現地就
職ニ付適當ナル措置ヲ講ゼントス。
朝鮮人心指導ニ關スル大綱ニ付謹ミテ 聖聞ニ達ス尚朝鮮統治ノ現況及本大綱ノ稍細目ニ關シテハ朝鮮總督ヨリ奏上セシム