【済】
閣甲第一四五号 起案 十二年九月五日
内閣書記官【下条】
内閣総理大臣 権 内閣書記官長 花押
外務大臣 権 内務大臣 後藤 大蔵大臣 井上
陸軍大臣 花押 海軍大臣 花押 司法大臣 花押
文部大臣 毅 農商務大臣 田健 逓信大臣 毅
鉄道大臣 花押
鮮人に対する迫害に関し、別紙案の通り、内閣総理大臣より告諭を発せられ然るべしと認む。
内閣告諭第二号
今次の震災に乗じ一部不逞鮮人の妄動ありとして、鮮人に [×暴行を加ふる×] <対し頗る不快の感を抱く> 者ありと聞く。鮮人の所為、もし不穏に亘るにおいては、速やかに取締りの軍隊または警察関官に通告して、その処置に俟つべきものなるに、民衆自ら濫りに [×鮮人×] <鮮人に> 迫害を加 [×へ、私刑を行ふが×] <ふるが> 如きことは、固より日鮮同化の根本主義に背戻するのみならず、また諸外国に報ぜられて決して好ましきことにあらず。事は今次の唐突にして困難なる事態に際会したるに基因すと認めらるるも、刻下の非常時に当り克く平素の冷静を失はず、慎重前後の措置を誤らず、もって我が国民の節制と平和の精神とを発揮せむことは、本大臣のこの際、特に望む所にして、民衆各自の切に自重を求むる次第なり。
大正十二年九月五日 内閣総理大臣
【済】
閣甲第一四五號 起案 十二年九月五日
内閣書記官【下條】
内閣總理大臣 権 内閣書記官長 花押
外務大臣 権 内務大臣 大藏大臣 井上
陸軍大臣 花押 海軍大臣 花押 司法大臣 花押
文部大臣 毅 農商務大臣 田健 遞信大臣 毅
鐵道大臣 花押
鮮人ニ對スル迫害ニ関シ別紙案ノ
通 内閣總理大臣ヨリ告諭ヲ発セラレ
然ルヘシト認ム
内閣告諭第二號
今次ノ震災ニ乗シ一部不逞鮮人
ノ妄動アリトシテ鮮人ニ [×暴行ヲ加フル×]
<対シ頗フル不快ノ感ヲ抱ク>
者アリト聞ク 鮮人ノ所為 若シ不穏ニ
亙ルニ於テハ 速ニ 取締ノ軍隊又ハ警
察関官ニ通告シテ其ノ䖏置ニ俟ツヘ
キモノナルニ 民衆自ラ濫リニ [×鮮人×]迫害
<鮮人ニ>
ヲ加 [×ヘ 私刑ヲ行フカ×] 如キコトハ固ヨリ日鮮同
<フルカ>
化ノ根本主義ニ背戾スルノミナラス 又 諸
外國ニ報セラレテ決シテ 好マシキコトニ非ス
事ハ今次ノ 唐突ニシテ困難ナル事態
ニ際會シタルニ基因スト認メラルルモ 刻下
ノ非常時ニ當リ克ク平素ノ冷静ヲ
失ハス 慎重前後ノ措置ヲ誤ラス 以テ
我國民ノ節制ト平和ノ精神トヲ発
揮セムコトハ 本大臣ノ此際特ニ望ム
所ニシテ 民衆各自ノ切ニ自重ヲ求ム
ル次苐ナリ
大正十二年九月五日 内閣總理大臣
↑「鮮人迫害に関し内閣総理大臣告諭の件」JACAR(アジア歴史資料センター)Ref.A15060091100、大正一二年関東大震災関係書類(国立公文書館 資00071100)