Obladi Oblako 資料室

帝国日本の専制と侵略戦争、植民地支配について知り、考えるための文書資料

比島独立指導要項 1943.6.26


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大日本帝国政府
【国家機密】
   比島独立指導要項
          昭和十八年六月二十六日
          大本営政府連絡会議提案

   [書き込み]東条氏に写しを渡すこと。

      比島独立指導要綱

一、方針

 八紘一宇の皇道に基き万邦をして各々其の所を得しむるの大義に則り、帝国輔道の下、努めて比島の創意と責任とを尊重しつつ、大東亜共営圏の一環たる新比島を生成す。
 而して比島をして速に帝国と緊密一体、大東亜戦争完遂に協力し得る物心両面の態勢を整備せしむ。

二、指導要領

1 独立準備の目標と為すべき比島、及び日比関係の根本的形態、別冊の如し。

2 現比島政府を刷新·強化し、独立後の政府の主体たり得る如く指導す。

3 現地軍に対し独立指導の大綱を示達し、其の指導下に比島側をして成るべく速に独立準備委員会を編制せしめ、独立に関する諸般の施策を立案·審議せしむ。

4 独立準備の進捗に伴ひ、比島の国家代表たるべきものを選定せしむ。之が選定方法は比島側の創意に委す。

5 独立準備概ね完成せば、国家代表たるべきもの其の他、比島要人を東京に召致し、独立許容に関する帝国の意図を正式に示達し、爾後、現地軍指導下に更に独立準備を完成せしむ。

6 独立の時期は概ね昭和十八年十月と予定し、其の準備完了の時期は九月下旬を目途とす。

7 独立に伴ひ適時、米英に対し宣戦せしむ。

8 独立と共に締結すべき日比間の条約は、必要の最小限に止む。

  別冊 新比島及び日比間の基本形態

     第一 建国の理念

一、大日本帝国を盟主とする大東亜共営圏の一環として道義に基く新比島を建設し、以て世界新秩序の創造に寄与す。

     第二 国家構成

ニ、比島の国体及び政体は、努めて比島人自体の発意に俟ち之を決定す。

三、領域は旧米領全比島とす。

四、国民は比島民族を主として之を構成す。
 日本人は比島国民たることなし。

五、国名、国旗、首都は主として比島側の発意ち依り之を定む。

     第三 日比関係の大綱

六、帝国の対比施策の要は、比島をして努めて比島人の創意と責任とに依り真に大東亜共営圏の一環たる独立国としての名実を備へしむるに在り。

七、帝国は比島に対し専任の特命全権大使を派遣、駐箚せしむ。
 当分の間、現地帝国側官憲の業務実施に関しては、特に軍事上の要請を考慮し、実情に即する如く措置するものとす。

八、帝国は比島政府内に所要の期間、必要なる顧問を配置し、之が指導に任ぜしむ。

九、ミンダナオ島に就ては、其の軍事的·経済的重要性に鑑み、特別の措置をとることあり。

     第四 国政

一〇、政治機構及び之が運用は、努めて強力·簡素ならしむるを方針とす。

一一、国民参政の範囲及び形態は、比島側の意志を尊重して之を定む。
 但し議会を設けたる場合に於ては、其の性格は特に行政の敏活なる運用を阻害せざる如く留意す。

一二、治外法権は之を設けず。
 但し日本人に対しては比島人に比し不利ならざる待遇を付与す。

一三、外交は帝国に緊密提携せしむ。

     第五 軍事

一四、帝国との間に軍事上完全協力を約し、帝国軍隊の為、一切の便宜を供与す。
 所要に応じ帝国軍隊の為の施設等を担任す。

一五、比島防衛に必要なる所要の陸海軍を保有す。
 但し兵力量及び編制の決定は、実質的に帝国之を指導し、少数の軍事顧問を置く。
 比島軍は戦時の作戦用兵に関し各々在比帝国陸海軍最高指揮官の指揮を承く。

     第六 財政、経済及び交通

一六、経済は大東亜経済建設の計画に従ひ、其の一環として、比島の主権下に公正·自由なる活動により之が振興を期し、特に農業、鉱業及び軽工業に重点を置く。
 但し大東亜建設上、特に必要なるものは、帝国の施策に順応せしむる如く所要の措置を講ず。

一七、金融に関しては資金の交流、決済方法、換算率等に就き帝国及び其の他の地域との協力的体制に於て之を整備す。
 発券機構を整備し、新なる通貨制度を確立す。

一八、財政は速に自立せしむる如く指導す。

一九、交通及び通信は比島の主権下に置くも、主要なるものに関しては帝国の要請を認めしむ。

二〇、比島と他地域との交通及び物資の交流は、大東亜を通ずる計画に従ひ之が実施の円滑を期す。
 而して物資交流の要領は、差し当り概ね現状を維持するも、為し得る限り比島人を之に参加·均霑せしむ。

二一、敵産は、大東亜戦争遂行上、及び大東亜経営上、帝国に於て把握するを必要とする特殊且つ重要なるもの以外は、之を比島に移譲す。

《原文》

大日本帝國政府 
【國家機密】
    比島獨立指導要項
          昭和十八年六月二十六日
          大本營政府連絡會議提案

     [書き込み]東條氏ニ寫ヲ渡スコト

       比島獨立指導要綱

  一、方針

八紘一宇ノ皇道ニ基キ萬邦ヲシテ各々其ノ所ヲ得シムルノ大義ニ則リ 帝國輔道ノ下 努メテ比島ノ創意ト責任トヲ尊重シツツ 大東亞共榮圏ノ一環タル新比島ヲ生成ス

而シテ比島ヲシテ速ニ帝國ト緊密一体 大東亞戰爭完遂ニ協力シ得ル物心兩面ノ態勢ヲ整備セシム

  二、指導要領

1 獨立準備ノ目標ト爲スベキ比島 及 日比關係ノ根本的形態 別冊ノ如シ

2 現比島政府ヲ刷新强化シ 獨立後ノ政府ノ主体タリ得ル如ク指導ス

3 現地軍ニ對シ獨立指導ノ大綱ヲ示達シ 其ノ指導下ニ比島側ヲシテ成ルベク速ニ獨立準備委員会ヲ編制セシメ 獨立ニ關スル諸般ノ施策ヲ立案審議セシム

4 獨立準備ノ進捗ニ伴ヒ 比島ノ国家代表タルベキモノヲ選定セシム 之ガ選定方法ハ比島側ノ創意ニ委ス

5 獨立準備 槪ネ完成セバ 国家代表タルベキモノ其ノ他 比島要人ヲ東京ニ召致シ 獨立許容に關スル帝國ノ意圖ヲ正式ニ示達シ 爾後 現地軍指導下ニ更ニ獨立準備ヲ完成セシム

6 獨立ノ時期ハ槪ネ昭和十八年十月ト豫定シ 其ノ準備完了ノ時期ハ九月下旬ヲ目途トス

7 獨立ニ伴ヒ適時米英ニ對シ戰宣セシム

8 獨立ト共ニ締結スベキ日比間ノ条約ハ必要ノ最小限ニ止ム

  別冊 新比島 及 日比間ノ基本形態

    第一 建國ノ理念

一、大日本帝國ヲ盟主トスル大東亞共榮圏ノ一環トシテ 道義ニ基ク新比島ヲ建設シ 以テ世界新秩序ノ創造ニ寄與ス

    第二 國家構成

ニ、比島ノ國体 及 政体ハ努メテ比島人自体ノ發意ニ俟チ之ヲ決定ス

三、領域ハ舊米領全比島トス

四、國民ハ比島民族ヲ主トシテ之ヲ構成ス
日本人ハ比島國民タルコトナシ

五、國名、國旗、首都ハ主トシテ比島側ノ發意ニ依リ之ヲ定ム

    第三 日比關係ノ大綱

六、帝國ノ對比施策ノ要ハ 比島ヲシテ努メテ比島人ノ創意ト責任トニ依リ眞ニ大東亞共榮圏ノ一環タル獨立國トシテノ名實ヲ備ヘシムルニ在リ

七、帝國ハ比島ニ對シ專任ノ特命全權大使ヲ派遣 駐箚セシム
當分ノ間 現地帝國側官憲ノ業務實施ニ關シテハ 特ニ軍事上ノ要請ヲ考慮シ 實情ニ卽スル如ク措置スルモノトス

八、帝國ハ比島政府内ニ所要ノ期間 必要ナル顧問ヲ配置シ 之ガ指導ニ任ゼシム

九、「ミンダナオ」島ニ就テハ其ノ軍事的 經濟的重要性ニ鑑ミ特別ノ措置ヲトルコトアリ

    第四 國政

一〇、政治機構 及 之ガ運用ハ努メテ强力 簡素ナラシムルヲ方針トス

一一、國民參政ノ範圍 及 形態ハ比島側ノ意志ヲ尊重シテ之ヲ定ム
但シ議會ヲ設ケタル場合ニ於テハ 其ノ性格ハ特ニ行政ノ敏活ナル運用ヲ阻害セザル如ク留意ス

一二、治外法權ハ之ヲ設ケズ
但シ日本人ニ對シテハ比島人ニ比シ不利ナラザル待遇ヲ附與ス

一三、外交ハ帝國ニ緊密提携セシム

    第五 軍事

一四、帝國トノ間ニ軍事上完全協力ヲ約シ 帝國軍隊ノ爲 一切ノ便宜ヲ供與ス
所要ニ應ジ帝國軍隊ノ爲ノ施設等ヲ擔任ス

一五、比島防衞ニ必要ナル所要ノ陸海軍ヲ保有
但シ兵力量 及 編制ノ決定ハ實質的ニ帝國 之ヲ指導シ 少數ノ軍事顧問ヲ置ク
比島軍ハ戰時ノ作戰用兵ニ關シ各々在比帝國陸海軍最高指揮官ノ指揮ヲ承ク

    第六 財政、經濟 及 交通

一六、經濟ハ大東亞經濟建設ノ計畫ニ從ヒ 其ノ一環トシテ比島ノ主權下ニ公正 自由ナル活動ニヨリ之ガ振興ヲ期シ 特ニ農業、鉱業 及 輕工業ニ重點ヲ置ク
但シ大東亞建設上 特ニ必要ナルモノハ 帝國ノ施策ニ順應セシムル如ク所要ノ措置ヲ講ズ

一七、金融ニ關シテハ資金ノ交流、決濟方法、換算率等ニ就キ帝國 及 其ノ他ノ地域トノ協力的體制ニ於テ之ヲ整備ス
發券機構ヲ整備シ 新ナル通貨制度ヲ確立ス

一八、財政ハ速ニ自立セシムル如ク指導ス

一九、交通 及 通信ハ比島ノ主権下ニ置クモ 主要ナルモノニ關シテハ帝國ノ要請ヲ認メシム

二〇、比島ト他地域トノ交通 及 物資ノ交流ハ大東亞ヲ通ズル計畫ニ從ヒ之ガ實施ノ圓滑ヲ期ス
而シテ物資交流ノ要領ハ 差シ當リ槪ネ現狀ヲ維持スルモ 爲シ得ル限リ比島人ヲ之ニ參加均霑セシム

二一、敵產ハ 大東亞戰爭遂行上 及 大東亞經營上 帝國ニ於テ把握スルヲ必要トスル特殊 且 重要ナルモノ以外ハ 之ヲ比島ニ移譲ス

↑比島独立指導要綱
昭和18年6月26日 大本営政府連絡会議
https://www.jacar.archives.go.jp/das/image/C12120394500