Ob-La-Di Oblako 文庫

帝国日本の侵掠戦争と植民地支配、人権蹂躙を記憶し、再現を許さないために、ひたすら文書資料を書き取る。姉妹ブログ「歴史を忘れる民族に未来はない!」https://obladioblako.hateblo.jp/ のデータ·ベースを兼ねる。

「況や窮乏困憊の極に達したる民衆を煽動して事端を惹起せむと企る者なきに非らざるに於てをや」 警視庁編『大正大震火災誌』(1925年)より 1923.9.1

警視庁編『大正大震火災誌』(1925年)より
第二章 警戒
第一節 震災直後に於ける応急警戒措置
第三、近衛師団長に対する出兵の要求

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 此時に方り、曩に管内視察の為に出動せる田辺·柏両監察官の帰庁するあり。各警察署よりの報告亦到達せるのみならず、本庁附近に於ける倒壊家屋、火災の延焼、避難者の雑踏等に依りて推察するも、事態、極めて用意ならざるものあり。然るに本庁並に市内二十五箇署の消失、警察官の遭難の如き不慮の事変をも生じたれば、斯る微弱なる警察力を以て非常時の警戒に任じ帝都の治安を完全に維持する事の困難なるや明らかなり。況や窮乏困憊の極に達したる民衆を煽動して事端を惹起せむと企る者なきに非らざるに於てをや。是に於て赤池総監は、兵力を借りて速に人心の安定を図り不祥事の発生を未然に防遏するの必要を感じ、小林警務課長を近衛師団司令部に急派して内議せしめたる後、午後四時三十分に至り、警視庁官制第四条第二項に基き盛岡師団長に対して正式に出兵を要求し、更に田辺監察官を遣し、出兵の瞬時も速かならん事を交渉せしめたり。

 (出兵要求書)

 大正十二年九月一日   赤池警視総監
   盛岡近衛師団長殿
       出兵要求の件
警戒救護の為相当兵員御派遣相成度此段及要求候也[警戒救護のため相当兵員御派遣あいなりたく、この段、要求に及びそうろうなり]。

  (参照) 警視庁官制
        (大正二年六月勅令第149号)
第四条の二 警視総監は非常·急変に臨み兵力を要し、又は警護の為兵備を要するときは東京衛戍総督、又は師団長に移牒して出兵を要求することを得。

 

https://dl.ndl.go.jp/info:ndljp/pid/1748933/119