Ob-La-Di Oblako 文庫

帝国日本の侵掠戦争と植民地支配、人権蹂躙を記憶し、再現を許さないために、ひたすら文書資料を書き取る。姉妹ブログ「歴史を忘れる民族に未来はない!」https://obladioblako.hateblo.jp/ のデータ·ベースを兼ねる。

暫く時日を藉さん 民衆は反省せよ 松井軍司令官声明 1937.12.18


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Doc.1862 E.262 22
21-8-8.11 検察側主張段階(支那事変)

暫く時日を藉さん
民衆は反省せよ
松井軍司令官聲明

【南京十八日發 同盟】 松井最高指揮官は南京における陣歿將兵慰靈祭終了後 十八日午後四時 特に司令官談を發表し 南京入城の歴史的時機に際し 重ねて全支朝野の反省を求め 皇軍今後の行動につき不退轉の決意を率直に表明 左の如き聲明をなした

軍は南京を占領し昨十七日 晴れの入城式、本十八日 慰霊祭を行ふや直に今後の作戰に卽應するため新たなる態勢に移り その一部は直に江北地方に 又 他の一部は浙江、安徽地方に向ひ 連續作戰を行ひつゝあり、然しながら軍全般としては上陸以來 四ヶ月に亙り間斷なき湖會戰に引續き追擊に移つたため相當疲勞してゐるので若干の休憩を必要ととするから この間において軍は新たに軍備を整備し、その作戰地方における警備、人民の宣撫を圖りつゝ再度の作戰を準備するはずである
       ◇
今後の軍の作戰については實に蔣介石 竝に國民政府の態度如何に依るもので 今直にこれを云ふことは出來ぬが、思ふに江南地方軍民は過去の戰闘に依り少なからず脅威を受けたものと思ふ、又 自然これに依り國民政府に眞の反省の機會を與へたと思ふ、自分はもと/\今次の出征により支那軍民の蒙つた甚大なる損失に對して寧ろ同情にたへない、從つて國民政府をして速かに反省せしめ 支那軍民をして直に皇軍に賴るべく親しむことを悟る日の一日も速かに來ることを欲するのであるが、國民政府にしてなほ反省悔悛することがなかつたならば遺憾乍ら當然の任務上 國民政府が漸次承服する時機の來るまで軍を進めなければならぬ
       ◇
時正に寒氣に向ひ年末も迫つてゐる、自然に軍としては一面には支那軍民の反省を促す爲、一面には軍の正義のため時日を支那軍民の爲に藉さうと思ふ、本日は我軍陣歿將兵を弔つて感慨深いものがある、然し乍らこれ等 陣歿將兵 惻隠の情は獨り日本將兵に止まらず 東洋の現勢に盲目にしてかくの如き事態に立ち至らしめた國民政府に虐使せられた支那軍陣歿將兵の上にも深く同情を寄せるものである。殊にこれ等 戰爭に禍せられた幾百萬の江浙地方の無辜の民衆の損害に對し一層の同情の念に堪へぬ、今や旭旗 南京城内に翻り 皇道 江南の地に輝き 東亞復興の曙光 將に來らんとす、この際 特に支那四億萬蒼生に對し反省を期待するものである

 

Reverse side of doc. #1862. E.262

表記ノ「松井軍司令官声明」記事ハ
昭和十二年十二月十九日附 東京朝日新聞 朝刊
ヨリ複写セルモノナルコトヲ照明ス

昭和二十一年六月十日
朝日新聞東京本社 調査部長
西島芳二(印)

 

↑A級極東国際軍事裁判記録(和文)(NO.13)
https://www.digital.archives.go.jp/das/image/F0000000000000340081 181/224
洞富雄編『日中戦争 南京大残虐事件資料集 第1巻 極東国際軍事裁判関係資料編』p.81