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軍参謀長注意事項(第10軍) 1937.10.25

昭和十二年十月二十五日 
軍参謀長注意事項、

 

   軍参謀長注意事項

 軍司令官の命に依り、軍の作戦上必要なる若干事項に関し、左に注意を述ぶ。
 よく諸隊に徹底せしめられたし。

一、軍紀の厳守に就て

 軍の雄大且つ困難なる任務を達成せんが為には、特に軍紀を厳正に保持すること肝要なり。各級指揮官は自ら其の範を示すと共に厳に部下を戒め、皇軍の威信を中外に宣揚することを要す。
 之が為、賞罰を明確ならしむるこ特に肝要なり。抗命、上官暴行等、苟も軍の統率上害毒を及ぼす件に関しては、些も仮借しることなく断乎として処断するを要す。

二、弾薬の節約に就て

 北支及び上海方面の戦闘に就て看るに、歩砲各種弾薬の乱費、甚だしきものあり。之、殆んど自信なき乱射と、夜間恐怖心に依る盲射なり。之が為、重要なる時期に弾薬の欠乏を来し、為に戦闘力を減殺し、又は不覚を取りし例、少からず。
 蓋し精鋭にして自信ある軍隊は、乱射·盲射を行ふものにあらず。恐怖心に捉やはれ自信なき軍隊程、乱射·盲射を行ふを常とするものなることを銘心するを要す。
 素質劣等なる支那軍如きに対しては、精鋭なる皇軍は十分なる確信を以て、至近距離に於て一弾必ず一敵を斃さずんば射撃せざるの主義を堅持するを要す。
 本件に関しては軍の全作戦期間、各級指揮官は厳に部下を戒められたし。

三、発煙筒の利用に就て

 発煙筒は利用価値極めて大なるも、其の供給十分ならざるを以て、特に必要なる場合、最も有効に使用する如く注意せられたし。

四、緑筒の利用に就て

 緑筒は毒瓦斯にあらず。各隊は必要に応じ最も有効に使用すべし。然れども之亦其の補給十分ならざるを以て、 特に必要大なる場合に於てのみ使用するの着意を必要とす。
 尚、軍に於ても防毒面を有せざる部隊あるを以て、此等友軍に危害を与へざるの注意を必要とす。

五、民船の拿捕に就て

 軍の作戦に於ては水路の利用は極めて重要にして、軍の前進、後方補給に水路をよく利用し得ると否とは、実に軍の作戦の成否に関すと云ふも過言にあらず。
 之が為、多くの民船を拿捕し、軍の用に供すること極めて肝要なり。部隊は其の向ふ方面に於て苟も民船を発見せば、勉めて之を拿捕し軍の用に供することに勉められたし。

六、家屋の焼却に就て

 家屋、村落は、敵が之を占拠しありて之を攻撃する為、戦術上、特に必要ある場合の外は、成るべく之を焼却せざるを要す。
 之、時将に寒冷季に入らんとするに際し、軍の休養及び衛生上、家屋、村落は極めて其の利用価値大なるを以てなり。
 上海方面の戦場に於ては殆んど全部家屋を焼却せし為、軍の後方に於ける病院設備、宿営等に利用すべき家屋、殆んど皆無にして、甚しく不利を招きつつあり。

七、支那住民に対する注意

 北支、殊に上海方面の戦場に於ては、一般の住民は老人、女、子供と雖も敵の間牒を勤め、或は日本軍の位置を敵に知らしめ、或は敵を誘導して日本軍を襲擊せしめ、或は日本軍の単独兵に危害を加ふる等、寔に油断なり難き実例多きを以て、特に注意を必要とす。殊に後方部隊に於て然りとす。斯の如き行為を認めし場合に於ては、些も仮借することなく断乎たる処置を執るべし。

八、少人数の兵の行動に関する注意

 少人数、殊に単独兵が主力部隊と離れて行動する場合、支那軍又は便衣隊等の為、危害を受けたる例、少からず。
 主力部隊に後れたる自動車数輌が襲撃せられたる例、又は本隊に後れたる落伍兵数名が襲はれたる例等あり。指揮官に於て注意を要す。

九、通信連絡に就て

1. 友軍飛行機に対する第一線の表示は、之を明確に現示する如く励行するを要す。特に海軍飛行機に対し行ふ場合に於て然りとす。
 上海方面の現況に鑑みるに、第一線部隊の戦線表示は其の実施、頗る不良にして、為に海軍機にして彼我の識別を誤リ、友軍を爆撃せし実例多々あり。之が為、空地連絡規定に、特に表示幕の幅を大ならしむる如く規定しあり、之が実施の励行を要望す。

2. 海軍無線班及び海軍航空連絡将校との連繫は特に緊要ならしむると共に、之が掩護及び給養に関し尽力するを要す。今次、海軍側は進んで第一線兵団に対し連絡すべき海軍無線班及び対空無線連絡将校を派遣せらるることとなれり。此等を派遣せられし司令部(本部)は之と密に連絡し、其の派遣の目的を達成すると共に、一面、海軍側の好意に対し之が掩護及び給養上、遺憾なからしむるを要す。

3. 陸海軍間の無線通信には陸海軍共同作戦用暗号書(表)及び陸海軍(空)暗号書を使用するを要す。陸軍指揮官より海軍無線通信系により海軍指揮官に対し通信する場合に於ては陸海軍協同作戦用暗号書(表)及び陸海軍(空)暗号書を使用するを要す。上海方面に於ては陸軍部隊に於て之を使用せず、為に海軍側は頗る不便を感じつつある現况なり。速かに本書の使用に慣熟し、以て其の使用を確実ならしむるを要す。

十、機秘密の目的保持に就て

今次事変に就て不注意の為、重要なる機秘密書類を敵に奪取せられたる二例あり。厳に注意を要す。特に行動間に於ける監視、警戒の処置に遺漏なきを要す。大行李に積載する場合、機秘密書類の車には特に明確なる標識を付し、監視、警戒に任ずる者に之を明示し、万一の場合に於ても絶対に敵手に委せざるの注意、肝要なり。
 敵地に深く行動する部隊に於て特に注意を必要とす。
 又、幹部及び兵の不注意なる私信により重大なる秘密を漏洩することあるを以て、注意せられたし。

十一、衛生に関する件

 病気の為、戦闘力を減殺すること甚だしきは、戦場の常なるを以て、各級幹部は特に部下を戒め、病気の予防に注意ありたし。
 軍の作戦地域は有名なるアメーバー赤痢の発生地にして、四季を通じ終息することなし。而して赤痢の予防注射はアメーバー赤痢には無効なるを以て、之が予防に特に注意を要す。之が為、生物、特に生水の飲用を厳禁すせられたし。
 又、上海方面の軍に於て九月初旬、コレラ突発し、多数の罹患者を出し、軍の戦闘力を著しく減殺せしが、其の原因は敵の細菌散布に依るの疑、濃厚なり。(支那軍の指令を奪取せるところ、其の中に井戸水を飲用すべからずとの指示あり。即ち敵が井戸に細菌を投ぜしものと察せらる。)故に仮令井戸水と雖も生の侭飲用すべからず。濾過器には石井式と岡崎式と二種類あり。岡崎式は細菌を除去するの効果なきを以て更に煮沸を必要とす。

 石井式は完全に細菌を除去するを以て、石井式に依り濾過せる生水は其の侭飲用するも差支へなし。

 濾過器の使用に就ては諸隊は特に之を重要視し、特定の人員を配属して之が使用及び給水に任ぜしむるを要す。又、濾過器の位置には適当なる表示をなし、直ちに発見し得る如くなしあること必要なり。

十二、人員の補充に就て

 死傷者を生じたる後、初めて其の補充を処置する如きことにては、絶へず軍の戦力を完全に充実して迅速·果敢なる作戦を遂行すること難し。依て補充令に定められたる所に従ひ、損傷を予期して補充員(幹部共)を予め戦場に招致し、所要の訓練を行ひ、欠員を生ずるや直ちに補充を行ふ着意を肝要とす。

十三、報告通報に関する件

 敵情、我が軍の状態、弾薬消耗の概況、我が軍の損害数、敵に与へし打撃の数量等は、勉めて具体的に、機を失することなく(少くも日々)報告せられたし。

一四、報告提出先に関する注意

軍隷下部隊が軍を飛び越へて直接中央部等に報告を出せし例あり。斯くの如き事なき様、注意せられたし。

十五、鹵獲兵器に関する注意

 鹵獲兵器は成るべく有利に我が軍に於て利用の途を講ずること必要なるを以て、諸隊は敵の兵器、彈藥、器財等を鹵獲せば、散逸を防止し、軍の利用に供するの着意を必要とす。
 然れども之が為、果敢なる作戦行動を阻害することあるべからず。、

十六、宣伝材料の取得に就て

 我が軍が人道的にして支那軍が非人道的なる実例を、成るべく多く写真に依り取得し、速かに軍に提出せられたし。

 

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昭和十二年十月二十五日
軍參謀長注意事項

 

  軍参謀長注意事項

軍司令官ノ命ニ依リ 軍ノ作戰上 必要ナル若干事項ニ関シ 左ニ注意ヲ述フ
ヨク諸隊ニ徹底セシメラレタシ

一、軍紀ノ嚴守ニ就テ

軍ノ雄大 且 困難ナル任務ヲ達成センカ爲ニハ 特ニ軍紀ヲ嚴正ニ保持スルコト肝要ナリ、各級指揮官ハ自ラ其ノ範ヲ示スト共ニ嚴ニ部下ヲ戒メ 皇軍ノ威信ヲ中外ニ宣揚スルコトヲ要ス
之カ爲 賞罰ヲ明確ナラシムルコト特ニ肝要ナリ、抗命、上官暴行等 苟モ軍ノ統率上 害毒ヲ及ス件ニ関シテハ 些モ假借スルコトナク 断乎トシテ處断スルヲ要ス

二、彈藥ノ節約ニ就テ

北支 及 上海方面ノ戰鬪ニ就テ看ルニ 歩砲各種彈藥ノ亂費 甚タシキモノアリ 之 殆ント自信ナキ乱射ト 夜間恐怖心ニ依ル盲射ナリ 之カ爲 重要ナル時期ニ彈藥ノ缺乏ヲ來シ 爲ニ戰鬪力ヲ減殺シ 又ハ不覺ヲ取リシ例 尠カラス
蓋シ精鋭ニシテ自信アル軍隊ハ 乱射、盲射ヲ行フモノニアラス、恐怖心ニ捉ハレ自信ナキ軍隊程 乱射、盲射ヲ行フヲ常トスルモノナルコトヲ銘心スルヲ要ス、
素質劣等ナル支那軍如キニ對シテハ 精鋭ナル皇軍ハ十分ナル確信ヲ以テ 至近距離ニ於テ 一彈 必ス一敵ヲ斃サスンハ射擊セサルノ主義ヲ堅持スルヲ要ス
本件ニ関シテハ軍ノ全作戰期間 各級指揮官ハ嚴ニ部下ヲ戒メラレタシ

三、発煙筒ノ利用ニ就テ

発煙筒ハ利用價値 極メテ大ナルモ 其供給十分ナラサルヲ以テ 特ニ必要ナル場合 最モ有効ニ使用スル如ク注意セラレタシ

四、緑筒ノ利用ニ就テ

緑筒ハ毒瓦斯ニアラス、各隊ハ必要ニ應シ最モ有効ニ使用スヘシ、然レトモ之亦 其補給十分ナラサルヲ以テ 特ニ必要 大ナル場合ニ於テノミ使用スルノ着意ヲ必要トス
尚 軍ニ於テモ防毒面ヲ有セサル部隊アルヲ以テ 此等友軍ニ危害ヲ與ヘサルノ注意ヲ必要トス

五、民船ノ拿捕ニ就テ

軍ノ作戰ニ於テハ 水路ノ利用ハ極メテ重要ニシテ 軍ノ前進、後方補給ニ水路ヲヨク利用シ得ルト否トハ 實ニ軍ノ作戰ノ成否ニ関スト云フモ過言ニアラス
之カ爲 多クノ民船ヲ拿捕シ 軍ノ用ニ供スルコト 極メテ肝要ナリ、部隊ハ其向フ方面ニ於テ苟モ民船ヲ発見セハ 勉メテ之ヲ拿捕シ軍ノ用ニ供スルコトニ勉メラレタシ

六、家屋ノ燒却ニ就テ

家屋、村落ハ 敵カ之ヲ占據シアリテ之ヲ攻擊スル爲 戰術上 特ニ必要アル場合ノ外ハ 成ルへク之ヲ燒却セサルヲ要ス
之 時將ニ寒冷季ニ入ラントスルニ際シ 軍ノ休養 及 衛生上 家屋、村落ハ極メテ其利用價値 大ナルヲ以テナリ、
上海方面ノ戰場ニ於テハ殆ト全部 家屋を燒却セシ爲 軍ノ後方ニ於ケル病院設備、宿營等ニ利用スヘキ家屋 殆ト皆無ニシテ 甚シク不利ヲ招キツツアリ、

七、支那住民ニ對スル注意

北支 殊ニ上海方面ノ戰場ニ於テハ 一般ノ住民ハ老人、女、子供ト雖モ敵ノ間牒ヲ勤メ、或ハ日本軍ノ位置ヲ敵ニ知ラシメ、或ハ敵ヲ誘導シテ日本軍ヲ襲擊セシメ 或ハ日本軍ノ單独兵ニ危害ヲ加フル等 寔ニ油断ナリ難キ實例 多キヲ以テ 特ニ注意ヲ必要トス、殊ニ後方部隊ニ於テ然リトス、斯ノ如キ行爲ヲ認メシ場合ニ於テハ 些モ假借スルコトナク 断乎タル處置ヲ執ルへシ、

八、少人数ノ兵ノ行動ニ関スル注意

少人数 殊ニ單独兵カ主力部隊ト離レテ行動スル場合 支那軍 又ハ便衣隊等ノ爲 危害ヲ受ケタル例 尠カラス
主力部隊ニ後レタル自動車 数輌カ襲擊セラレタル例 又ハ本隊ニ後レタル落伍兵 数名カ襲ハレタル例等アリ、指揮官ニ於テ注意ヲ要ス

九、通信連絡ニ就テ

1. 友軍飛行機ニ對スル第一線ノ表示ハ 之ヲ明確ニ現示スル如ク勵行スルヲ要ス 特ニ海軍飛行機ニ對シ行フ場合ニ於テ然リトス、
上海方面ノ現况ニ鑑ミルニ第一線部隊ノ戦線表示ハ 其實施 頗ル不良ニシテ 爲ニ海軍機ニシテ彼我ノ識別ヲ誤リ 友軍ヲ爆擊セシ實例 多々アリ、之カ爲 空地連絡規定ニ 特ニ表示幕ノ幅ヲ大ナラシムル如ク規定シアリ、之ガ實施ノ勵行ヲ要望ス、

2. 海軍無線班 及 海軍航空連絡將校トノ連繫ハ特ニ緊要ナラシムルト共ニ 之カ掩護 及 給養ニ関シ盡力スルヲ要ス、今次 海軍側ハ進ンテ第一線兵團ニ對シ連絡スヘキ海軍無線班 及 對空無線連絡將校ヲ派遣セラルヽコトヽナレリ、此等ヲ派遣セラレシ司令部(本部)ハ之ト密ニ連絡シ 其ノ派遣ノ目的ヲ達成スルト共ニ 一面 海軍側ノ好意ニ對シ之カ掩護 及 給養上 遺憾ナカラシムルヲ要ス

3. 陸海軍間ノ無線通信ニハ陸海軍共同作戰用暗號書(表)及 陸海軍(空)暗號書ヲ使用スルヲ要ス
陸軍指揮官ヨリ海軍無線通信系ニヨリ海軍指揮官ニ對シ通信スル場合ニ於テハ陸海軍協同作戰用暗號書(表)及 陸海軍(空)暗號書ヲ使用スルヲ要ス、上海方面ニ於テハ陸軍部隊ニ於テ之ヲ使用セス 爲ニ海軍側ハ頗ル不便ヲ感シツヽアル現况ナリ、速ニ本書ノ使用ニ慣熟シ 以テ其ノ使用ヲ確實ナラシムルヲ要ス

十、機秘密ノ目的保持ニ就テ

今次事変ニ就テ不注意ノ爲 重要ナル機秘密書類ヲ敵ニ奪取セラレタル二例アリ、嚴ニ注意ヲ要ス 特ニ行動間ニ於ケル監視、警戒ノ處置ニ遺漏ナキヲ要ス 大行李ニ積載スル場合 機秘密書類ノ車ニハ特ニ明確ナル標識ヲ附シ 監視、警戒ニ任スル者ニ之ヲ明示シ 萬一ノ場合ニ於テモ絶對ニ敵手ニ委セサルノ注意 肝要ナリ、
敵地ニ深ク行動スル部隊ニ於テ特ニ注意ヲ必要トス
又 幹部 及 兵ノ不注意ナル私信ニヨリ重大ナル秘密ヲ漏洩スルコトアルヲ以テ 注意セラレタシ、

十一、衛生ニ関スル件

病気ノ爲 戰鬪力ヲ減殺スルコト甚タシキハ 戰場ノ常ナルヲ以テ 各級幹部ハ特ニ部下ヲ戒メ 病気ノ豫防ニ注意アリタシ
軍ノ作戰地域ハ有名ナル「アメーバー」赤痢ノ発生地ニシテ 四季ヲ通シ終息スルコトナシ、而シテ赤痢ノ予防注射ハ「アメーバー」赤痢ニハ無効ナルヲ以テ 之カ予防ニ特ニ注意ヲ要ス、之カ爲 生物 特ニ生水ノ飲用ヲ嚴禁セラレタシ、
又 上海方面ノ軍ニ於テ九月初旬「コレラ」突発シ 多数ノ罹患者ヲ出シ 軍ノ戰鬪力ヲ著シク減殺セシカ 其ノ原因ハ敵ノ細菌散布ニ依ルノ疑 濃厚ナリ、(支那軍ノ指令ヲ奪取セルトコロ 其ノ中ニ井戸水ヲ飲用スへカラストノ指示アリ 即チ敵カ井戸ニ細菌ヲ投セシモノト察セラル)故ニ假令 井戸水ト雖 生ノ儘 飲用スへカラス 濾過器ニハ石井式ト岡崎式ト二種類アリ 岡崎式ハ細菌ヲ除去スルノ効果ナキヲ以テ 更ニ煮沸ヲ必要トス、
石井式ハ完全ニ細菌ヲ除去スルヲ以テ 石井式ニ依リ濾過セル生水ハ其ノ儘 飲用スルモ差支ヘナシ
濾過器ノ使用ニ就テハ諸隊ハ特ニ之ヲ重要視シ 特定ノ人員ヲ配属シテ之カ使用 及 給水ニ任セシムルヲ要ス、又 濾過器ノ位置ニハ適當ナル表示ヲナシ 直チニ発見シ得ル如クナシアルコト必要ナリ、

十二、人員ノ補充ニ就テ

死傷者ヲ生シタル後 初メテ其補充ヲ處置スル如キコトニテハ 絶ヘス軍ノ戰力ヲ完全ニ充實シテ迅速果敢ナル作戰ヲ遂行スルコト難シ 依テ補充令ニ定メラレタル所ニ從ヒ 損傷ヲ予期シテ補充員(幹部共)ヲ豫メ戰場ニ招致シ 所要ノ訓練ヲ行ヒ 缺員ヲ生スルヤ直チニ補充ヲ行フノ着意ヲ肝要トス、

十三、報告通報ニ関スル件

敵情、我カ軍ノ状態、彈藥消耗ノ慨况、我軍ノ損害数、敵ニ與ヘシ打擊ノ数量等ハ 勉メテ具体的ニ 機ヲ失スルコトナク(少クモ日々)報告セラレ度

一四、報告提出先ニ関スル注意

軍隷下部隊カ軍ヲ飛ヒ越ヘテ直接 中央部等ニ報告ヲ出セシ例アリ、斯ノ如キ事ナキ様 注意セラレ度

十五、鹵獲兵器ニ関スル注意

鹵獲兵器ハ成ルへク有利ニ我軍ニ於テ利用ノ途ヲ講スルコト必要ナルヲ以テ 諸隊ハ敵ノ兵器 彈藥 器財等ヲ鹵獲セハ 散逸ヲ防止シ 軍ノ利用ニ供スルノ著意ヲ必要トス
然レトモ之カ爲 果敢ナル作戰行動ヲ阻害スルコトアルへカラス、

十六、宣傳材料ノ取得ニ就テ

我カ軍カ人道的ニシテ 支那軍カ非人道的ナル實例ヲ 成ルへク多ク冩眞ニ依リ取得シ 速カニ軍ニ提出セラレ度

 

↑「第10軍作戦指導に関する参考資料 其1 昭和12年10月12日~12年10月30日」より
軍参謀長注意事項 昭和12年10月25日
https://www.jacar.archives.go.jp/das/image/C11111741600 p.1~p.10