閣甲第八二号
起案[大正]十五年四月二十日
裁可[大正]十五年四月二十一日
国家総動員機関 設置準備委員会 設置に関する件
国家総動員の用意 緊急にして欠くべからざるは 世界大戦中 及 大戦後に於ける欧米列強の施設に徴して明瞭なり
而して国家総動員計画の根基たるべき諸般の調査 特に国家各種の資源 及 其の需給状態の精査の如きは 啻に国防上 総動員の為 之を必要とするのみならず 帝国の現下喫緊と認むる産業の助長 並 社会政策の立案上にも亦 欠くべからざる基礎的要素たり
加之 第五十議会に於て貴衆両院より国防会議設置に関して建議し 以て国家総動員業務管掌機関の設立を要望する所ありたり
然れども国家総動員の体系・任務等は 帝国資源の情況 及 総動員業務の多岐多端にして 其の関係する方面 頗る広汎なるに鑑み 之が決定は周到なる研究を要する所 尠からざるを以て 先づ関係各庁等より別紙の如き組織により内閣の国家総動員準備委員会を設け 将来設置すべき機関の組織・任務、業務遂行の方案 及 該機関と各庁以下との連携等に関し慎重なる研究を重ねしめ 以て国家総動員機関の設置準備上 遺憾なきを期すること肝要なりと認む
右 閣議に供す
参考
大正十四年一月三十日提出
建議第二五号
国防会議設置に関する建議案
右 成規に拠り提出候也
大正十四年一月三十日
提出者 蟻川五郎作
賛成者 内野辰次郎 外 二十九名
国防会議設置に関する建議
政府は国防の完備を期する為 速に国防会議を設置せられむことを望む
右 建議す
国防会議設置に関する建議 理由書
現今の戦争は国力の戦争なり 故に国防の整備に就ては軍部当局の外 直接間接に関係ある各方面の官民をして予め其の議に参画せしむべし 之 国民の諒解ある国防を作成し 国防の基礎を強固にし 又 其の実施に遺憾なからしむる所以にして 茲に至り始めて真に国防の完備を期し得べしと信ず 是れ本案を提出する所以なり
大正十四年二月三日 建議第四六号
国防会議設置に関する建議案
右 成規に拠り提出候也
大正十四年二月三日 提出者 長岡外史
賛成者 松田源治 外 三十名
国防会議設置に関する建議
政府は時勢の変遷に鑑み速に国防会議を設置せられむことを望む
右 建議す
国防会議設置に関する建議案 理由書
帝国将来の国防は国家の総力を以て之に当らざるべからず 国民総動員を以てする国民戦の準備の統制は 全知全能を尽して精神的物質的能力の組織聯繋統一を図り統帥権の徹底を期せざるべからず 是れ本案を提出する所以なり
参照【秘】
国家総動員機関設置の為 準備委員会設置に関する閣議案
(陸軍省原案)
国家に総動員の用意 緊急にして欠くべからざるは 世界大戦中 及 大戦後に於ける欧米列強の施設に徴し明瞭なり 而して国家総動員計画の根基たるべき諸般の調査 特に国家百般の資源 及 其の需給情態の精査の如きは啻に国防上 総動員の為 之を必要とするのみならず 帝国の現下喫緊と認むる産業の助長 並 社会政策の上にも亦 欠くベからざる基礎的要素たり
第五十議会に於て貴衆両院議員中 欧米諸強国 何れも国家総動員の施設に関し殆ど間然する所なきに拘らず 帝国の独り之に欠如せるは 我国防上 看過し難き所なりと論ずる者 尠からず 之が緊急を高唱し国家総動員業務管掌機関の設立に関し建議する所ありたり
是れ方に該機関設置の機運 熟せるものなりと謂ふべし
然れども国家総動員機関の体系・任務等は帝国資源の情況 及 総動員業務の多岐多端にして其の関係する方面 頗る広汎なるに鑑み 之が決定には周到なる研究を要する所 尠からざるを以て 権宜の措置として先づ関係各省等より附表の如き編制に依り国家総動員機関 設置準備委員会を設け 将来設置すべき機関の組織、任務、業務遂行の方案 及 該機関と各省以下との連携等に関し慎重なる考究を重ねしめ 以て国家総動員機関の設置準備上 遺憾なきを期すること肝要なりと認む
https://www.digital.archives.go.jp/das/image/M0000000000001758241
公文類聚・第五十編・大正十五年~昭和元年・第五巻・官職一・...より
「国家総動員機関設置準備委員会ヲ設置ス」