Ob-La-Di Oblako 文庫

帝国日本の侵掠戦争と植民地支配、人権蹂躙を記憶し、再現を許さないために、ひたすら文書資料を書き取る。姉妹ブログ「歴史を忘れる民族に未来はない!」https://obladioblako.hateblo.jp/ のデータ·ベースを兼ねる。

「一時我将兵により少数の掠奪行為(主として家具等なり)強姦等もありし如く、多少は已むなき実情なり。」 松井石根 戦陣日誌 1937.12.20 

   12月20日  晴

 此日、大使館に至り新着の領事館員と会見し状況を聞く。曰く、去七月大使館引上当時、支那側に寄託したる我公使建物は、一部の小奪掠の外、概して相当に保護せられ、殊に大使館建物は内容共完く完全に保存せられあるは、支那側の措置としては寧ろ感服の値あり。
 又、避難区に収容せられある支那人は概して細民層に属するものなるも、其数十二万余に達し、独、米人宣教師の団体と紅卍会等の人共と協力して保護に任じあり。聞く。江蘇省政府は其引上に際し、独人シーメンスのものに銀十万元と南京現在の糧米を托して保護を依頼ししたるものなりと云ふ。真否明かならざれど、現に城内に現蓄せられある糧米は一万担に達し、外にも尚、隠匿せられあるものもあり、当分の間、居留民の糧食に事欠くことなしと云ふ。
 支那要人等、著名のものに残留せるもの見当らざるも、漸次、相当資産階級のものも顔を出し来る模様に付、其内矢張、治安維持、地方自治支那人団体を形成するを得べき見込なり。此南京の宣撫は最初、軍特ム部をして之に当らしむる積なりしも、人不足の為め矢張上海派遣軍をして適当の人(隊長)を選し、特ム機関、領事館のものをも併せ指揮して宣撫に当らしむる事とせり。
 尚聞く所、城内残留内外人は一時、不少恐怖の情なりしが、我軍の漸次落付くと共に、漸く安堵し来れり。一時我将兵により少数の掠奪行為(主として家具等なり)強姦等もありし如く、多少は已むなき実情なり。

https://obladioblako.hatenablog.com/entry/2020/09/13/175032

 

  十二月二十日  晴

此日 大使館ニ至リ新着ノ領事館
員等ト会見シ状況ヲ聞ク 曰ク 去七
月 大使館引上當時 支那側ニ寄託シタル
我公使建物ハ一部ノ小奪掠ノ外 概シテ
相當ニ保護セラレ 殊ニ大使館建物ハ
内容共 完ク完全ニ保存セラレアルハ
支那側ノ措置トシテハ寧ロ感服ノ値アリ

又 避難区ニ収容セラレアル支那人ハ概シテ
細民層ニ属スルモノナルモ 其数 十二萬餘
ニ達シ 独、米人宣敎師ノ団軆ト紅卍字
會等ノ人等ト協力シテ保護ニ任ジアリ 聞ク
江蘇省政府ハ其引上ニ際シ 独人 シーメンス
ノモノニ銀十萬[✕両✕]元ト南京現在ノ糧米ヲ托
シテ保護をヲ依頼シタルモノナリト云フ 真否
明カナラサレト現ニ城内ニ現蓄セラレアル糧米
ハ一萬担ニ達シ 外ニモ尚 隠匿セラレアルモノアリ 當
分ノ間 居留民ノ糧食ニ事欠クコトナシト云フ

支那要人等 著名ノモノハ残畄セリモノ見當
ラサルモ 漸次 相當資産階級ノモノモ顔ヲ出
シ来ル模様ニ付 其内 矢張 治安維持 地方
自治支那人団体ヲ形成スルヲ得ヘキ見
込ナリ 此南京ノ宣撫ハ最初 軍特ム部ヲ
シテ之ニ當ラシムル積ナリシモ 人不足ノ為メ矢張
上海派遣軍ヲシテ適当ノ人(隊長)ヲ選ヒ
特ム機関 領事館ノモノオモ併セ指揮シ
テ宣撫ニ當ラシムル事トセリ

尚 聞ク所 城内残留内外人ハ一時 不少 恐怖ノ
情ナリシカ 我軍ノ漸次 落付クト共ニ 漸ク
安堵シ来レリ 一時 我将兵ニヨリ少数ノ奪略行
為(主トシテ家具等ナリ)強姦等モアリシ如ク 多少ハ
已ムナキ実情ナリ

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