報道官会見要旨 (平成11年5月14日(金)15:00~ 於 会見室)
[中略]
石原都知事の「中国に関する発言」
(報道官)昨日の新聞紙上で、石原都知事が改めて台湾、南京事件、チベット問題について個人の考えを表明しているが、その中で、「日本政府の正式な見解を聞いたことがない」と述べておられるようなので、それぞれの問題についての政府の考えをここで改めて簡潔に述べておきたいと思う。
台湾問題に関するわが国の立場は、日中共同声明に示された通りであり、政府としては台湾をめぐる問題が台湾海峡両岸の直接の当事者間の話し合いを通じて平和的に解決されることを強く希望している。
また、いわゆる南京事件については、その事実関係をめぐり種々の議論が存在していることは承知しているが、日本軍の南京入城後、非戦闘員の殺害あるいは略奪行為等があったことは否定できない事実であると考えている。いずれにせよ、過去の一時期植民地支配と侵略により多くの国々、とりわけアジア諸国の人々に対して多大の損害と苦痛を与えたことを率直に認識し、戦争は二度と繰り返さず平和国家としての道を歩んで行く決意であることは従来より繰り返し申し上げている通りである。
チベットの地位をめぐる問題については、わが国は従来より、中国の内政問題であるとの立場である。同時に、チベットを含め人権問題が普遍的な問題であることは論を待たないわけで、同地域においても人権は保障されるべきものと考えている。
(問)(先ほどの外報官の発言は)都知事の発言について何か中国側からリアクションがあったからか。
(報道官)石原都知事は今申し上げたような問題について選挙戦の時から種々コメントされてきているが、その段階で中国側からかかる問題についての関心あるいは懸念の表明があった。そういった状況も踏まえ、今回の新聞記事について申し上げれば、先ほど申し上げたように石原都知事がこの記事の中で「日本政府の正式な見解を聞いたことがない」と言っておられるので、政府の立場は再三申し上げていることではあるが、この機会にもう一度改めて述べさせていただいた次第である。
(問)都知事のところへ今言った趣旨のことを伝えるのか。
(報道官)(今、記者会見という)公開の場で自分(報道官)がこうして申し上げている。それは何らかの形で(伝わると思う)。
(問)直接届ける積もりはないのか。
(報道官)特に考えていない。
(問)確認だが、本件について中国側から改めて何か言って来たのか。
(報道官)そう申し上げたのではなく、今まで石原都知事の発言について中国側から種々関心の表明があったことを踏まえ、また先ほど申し上げたように「日本政府の立場を聞いていない」ということを言われたので、日本政府の立場をこの機会にもう一度改めて明らかにさせていただいたということである。
(問)石原知事は南京事件の事実よりその規模に関心を持っているようだが、政府は被害規模についてはどう考えているのか。
(報道官)日本軍の南京入城後、すなわち1937年(昭和12年)に多くの非戦闘員が殺害あるいは略奪行為などに遭ったことは否定できない事実であると考えている。具体的な人数については数千人から30万人、40万人に至るまで様々な説があり、政府としてどれが正しい数か認定することは困難であると考えている。
(問)都知事のこうした一連の発言に対する外務省の見解如何。
(報道官)前から申し上げている通り、石原知事の発言は知事個人の考えと承知している。それに対して政府としての考え方は先ほど申し上げた通りであり、今までも繰り返し明らかにしているところで、政府のそういう立場には何らの変更もない。その点誤解のないように申し上げた次第である。
(問)知事が聞かれるから答えるのだろうが、そういう発言を繰り返すことが今コソボ問題をめぐって緊迫している日中関係に更に悪い影響を与えるかもしれないということで、何らかの形で知事に「そういった言は慎重にするように」伝える積もりはあるか。
(報道官)繰り返しになるが、石原知事は個人としての考えを述べておられる。政府としては政府の考え方ははっきりしており、こういった機会に政府としての考えをはっきり述べさせていただくということである。
↑報道官会見記録(5月14日付) 石原都知事の「中国に関する発言」
https://www.mofa.go.jp/mofaj/press/kaiken/hodokan/hodo9905.html#3-B