[表紙]
現地事変処理に資する為の
現下東亜情勢判断
昭15.6.23
支那総軍参謀部
【一復資料】 防衛研修所戦史室
〔【中央】戦争指導 重要国策文書 948〕
[中表紙]
現地事変処理に資する為の現下
東亜情勢判断
[本文]
【極秘】
15. 6. 23
総軍参謀部
現地事変処理に資する為の現下東亜情勢判断
判決
現下欧洲情勢に善処し、これを事変の即決に利導し、事変の解決にあたりては日支一転の資に供し、爾後、欧洲戦争の推移に即応して相当範囲の東亜解放を施策す。
(備考) 欧州情勢判断
独乙はドーバー海峡を超越するため少くも半年ないし一年の準備を要すべく、この間、英国は屈服することなかるべし。爾後、欧洲戦争が英独決戦に終るや、あるいはそれぞれ米およびソを後方連絡原とする持久戦に移行するやは、一に独乙のドーバー海峡超越能力に関す。この間、ソおよび米の参戦をも考慮せらる。しかして英国の情勢は、ソ邦の共同参戦なき限り、その好転は望み難し。
処置
第一期 事変解決に関する努力
一、当面、仏国屈服の影響を利用す。
(イ) 仏印の国境を閉鎖せしめ、かつ一部の監視部隊を国境に進駐せしめ、次いで軍隊の通過および交通機関の利用を容認せしむ。
(ロ) 仏租界の敵性を厳重に除去せしむ。
(ハ) 前二項、もしその実行、効を収めざるにおいては、これを軍事占領す。
二、対仏施策と併行し対英施策を強化す。
(イ) ビルマ国境を閉塞せしむ。
(ロ) 英および共同租界ならびに香港に対し敵性除去を強化せしむ。(所要に応じ貿易管理の適用ないし平時封鎖の程度にまで至らしむ。)
三、ソ邦を極東の拘束より解放す。
(イ) 日ソ不可侵条約(五年)を締結す。
(ロ) 右条約と別に極東赤化の禁止ならびに対重慶支援停止を前提とする新彊省現状黙認の政治協定、ならびに燃料および鉱物資源供給の経済協定を処理す。
四、対独伊関係を強化す。
(イ) 即時、独伊の欧州政策と我が東亜政策との一致提携に関する折衝を開始す。
(ロ) 速やかに親独強力戦時内閣を具現す。
五、国内態勢を強化す。
(イ)政戦略一本の戦争指導機構を確立す。
(ロ)国内一般態勢を十年戦争遂行の形態に移行せしむ。
第二期 事変解決の転機
六、日支共同の目標を設定し彼我の意志を明らかにし、心機一転に資す。
(イ)東亜再建の前提としての東亜解放
(ロ)欧米の侵略より支那の解放(租界、治外法権、不平等条約、香港等)
七、国内態勢の強化施策を継続す。
(イ)戦争終結・戦前復帰の観念を是正し、国家の新段階への躍進を指導す。
(ロ)対圏外東亜建設戦開始の観念を徹底せしむ。
第三期 事変解決後の反転
八、独乙のドーバー海峡超越企図明らかなるに至らば、機を失せず日支とも独伊側に参戦し、かつソ邦の参加を促し、左のごとく共同部署に就く。
(イ)日本 仏印、シンガポールを攻略、しかる後、蘭印を占領し、馬来連邦を結成す。
(ロ)支那 各租界および香港(日本・伊の協力を予期す)を奪回したる後、ビルマを占領し、状況により更に印度に向ふ。
(註)戦争長期なるに従ひ、印度及び豪州を独立せしむ。
(ハ)ソ邦 中央亜細亜を平定したる後、東部アフリカに向ひ西南進す。
(ニ)伊国 地中海の制覇を完成したる後、西部アフリカに向ひ南進す。
(ホ)独国 英本土を攻略したる後、南部アフリカを其の勢力範囲とす。
(註 此の間、米国の参戦あるべし。我は機を失せず比島を占領す。)
九、独乙のドーバー海峡超越能力無く持久戦に入る場合に在りては、左の如く措置し、戦後経営を施行し国力を充実して情勢の推移を待つ。
(イ)日本 東亜、就中シンガポール以東地域に於ける資源を合理的方法により強行獲得す。
(ロ)支那 租界及び香港の奪回
[表紙]
現地事変処理に資する爲の
現下東亜情勢判断
昭一五、六、二三
支那縂軍参謀部
【一復資料】 防衛研修所戰史室
(中央 戦争指導 重要国策文書 948)
[中表紙]
現地事変處理ニ資スル爲ノ現下
東亜情勢判断
[本文]
【極秘】 一五、六、二三
總軍参謀部
現地事変處理ニ資スル爲ノ現下東亜情勢判断
判決
現下欧洲情勢ニ善處シ 之ヲ事変ノ即決ニ利導シ 事変ノ解決ニ方リテハ日支一轉ノ資ニ供シ 尓後 欧洲戰爭ノ [×発展×] <推移> ニ即応シテ [×所要×] <相當> 範圍ノ東亜解 [×決×] 放ヲ施策ス
(備考)欧洲情勢判断
独乙ハ 「ドーバー」 <海峡> ヲ超越スルタメ <少クモ> 半年 乃至 一年ノ準備ヲ要ス [×ヘシ×] ヘク 此ノ間 英國ハ屈服スルコト無カルヘシ 尓後 欧洲戰爭カ 英独決戰ニ終ルヤ 或ハ夫レ夫レ米 及 「ソ」 ヲ後方連絡原トスル持久戰ニ移行スルヤハ 一ニ独乙ノ 「ドーバー」 <海狭> 超越能力ニ関ス 此ノ間 「ソ」 <及> 米ノ参戰ヲモ考慮セラル 而シテ英國ノ情勢ハ 「ソ」 邦ノ
共同参戰無キ限リ 其好轉ハ望ミ難シ
處置
苐一期 事変解決 <ニ関スル> 努力 [×間×]
一、當面 佛國屈服ノ影響ヲ利用ス
(イ)、佛印ノ國境 <ヲ> 閉鎖 <セシメ> [×及×] <且> 一部 <ノ> 监視部隊ヲ <國境ニ> 進駐 [× (一联) ×] セシ [×ム×] メ 次テ軍隊ノ通過 及 交通機関ノ利用ヲ容認セシム
(ロ)、佛租界ノ敵性 <ヲ嚴重ニ> 除去セシム
ハ、前二項 若 其実行 [×不十分ナ×] <効ヲ収メサ> ルニ於テハ之ヲ軍事
占領ス [× (佛印二师、上海一联、天津一大、漢口一大 ) ×]
二、対佛施策ト併行シ対英施策ヲ強化ス
(イ、「ビルマ」國境ヲ閉塞セシム
ロ、英及共同租界 並 香港ニ対シ敵性除去ヲ強化セシム ( <所要ニ応シ> 貿易管理ノ適用 乃至 平時封鎖ノ程度ニ迄 至ラシム)
三、「ソ」 邦ヲ極東ノ拘束ヨリ解 [×決セシム×] 放ス
イ、日 「ソ」 不可侵條約 (五年) ヲ締結ス
ロ、右條約 [×ニハ×] <ト別ニ> 極東赤化ノ禁止 <並 対重慶支援停止> ヲ前提トスル [×甘粛以西ノ×] 新疆省現状 [×容×] <黙> 認ノ政治協定 [×及×] <並> 燃料 及 鉱物資源供給ノ経済協定ヲ [×包含×] <處理> ス
四、対獨伊 [×提携×] 関係ヲ強化ス
イ、即時 獨伊ノ欧洲政策ト我東亜政策トノ一致提携ニ関スル折衝ヲ開始ス
ロ、<速ニ> 親獨 強力 戰時内閣ヲ具現ス
五、國内態勢ヲ強化ス
イ、政戰略一本ノ戰争指導機構ヲ確立ス
ロ、國内一般態勢ヲ十年戰争 <遂行> ノ形態ニ移行セシム
苐二期 事変解決ノ轉機
六、日支共同ノ目標ヲ設定シ [×不拘常次 <ノ畫期> ニ於テ之ヲ×] 彼我ノ意志ヲ明ニシ 心氣 [×ヲ×] 一轉 [×セシム×] ニ資ス
イ、東亜再建ノ前提トシテノ東亜解放
ロ、[× <支那ノ> ×]欧米ノ侵略ヨリ [×支那×] <支那> ノ解放 ( [×香氵×] 租界、治外法権、不平等條約、香港 <等> )
七、國内態勢ノ強化施策ヲ継続ス
イ、戰爭終結 戰前復帰ノ観念ヲ是正シ 國家ノ新段階ヘノ躍進ヲ指導ス
ロ、対圏外 東亜建設戰 開始ノ観念ヲ徹底セシム
苐三期 事変解決後ノ反転
八、独乙ノ 「ドーバー」 <海峡> 超越企圖 明カナルニ至ラハ 機ヲ失セス <日支共> 独伊側ニ参戰シ 且 「ソ」 邦ノ参加ヲ促シ 左ノ如ク共同部署ニ就ク
イ、日本 仏印、「シンガポール」 ヲ攻略 了ル後 蘭印ヲ占領シ馬来联邦ヲ結成ス
ロ、支那 各租界 及 香港 < (日本<、伊>ノ協力ヲ豫期ス) > ヲ奪回シタル後 「ビルマ」
ヲ占領 [×ス×] シ [×餘勢ヲ以テ×] <情况ニ依リ更ニ> 印度ニ向フ
(註)戦爭 長期ナルニ從ヒ 印度 及 濠洲ヲ独立セシム [×之カ爲 印度 [×ニ向ヒ×] <解放ノタメ> 日支共同作戦スルコトアリ×]
ハ、「ソ」 邦 中央亜細亜 [×及×] <ヲ平定シタル後> 東部 「アフリカ」 ニ向ヒ西南進ス
ニ、伊國 地中海ノ制覇ヲ完成シ <タル後> 西部 「アフリカ」 ニ向ヒ南進ス
ホ、独國 英本土ヲ攻略<シタル後>南部 「アフリカ」 ヲ其勢力範囲トス
(註 此ノ間 米国ノ参戰アルヘシ 我ハ機ヲ失セス比島ヲ占領ス、)
九、独乙ノ 「ドーバー」 <海峡> 超越 [×企圖×] <能力> 無 [×キトキハ×] ク持久戰ニ入ル場合ニ在リテハ 左ノ如ク措置シ 戰後經営ヲ [×以テ×] <強行シ> 國力ヲ充実シテ情勢ノ推移ヲ待ツ
イ、日本 東亜 就中 [×仏印 及 蘭印×] 「シンガポール」 以東地域ニ [×対ス×] <於ケル> 資源 [×ノ提供ノ具現×] ヲ [×獲得×] 合理的方法ニ依リ <強行> 獲得ス
ロ、支那 租界 及 香港ノ奪回
↑現地事変処理に資するための現下の東亜情勢判断 昭和15年6月23日(防衛省防衛研究所、中央-戦争指導重要国策文書-948) https://www.jacar.archives.go.jp/das/image/C12120132200 https://www.jacar.archives.go.jp/das/image/C12120132300 https://www.jacar.archives.go.jp/das/image/C12120132400 https://www.jacar.archives.go.jp/das/image/C12120132500 https://www.jacar.archives.go.jp/das/image/C12120132600 https://www.jacar.archives.go.jp/das/image/C12120132700
[表紙]
東亜情勢判断と言うべき戦略態勢の準拠 原本史料 一復史料 防衛研究所戰史室 中央 戦争指導 重要国策文書 966
[中表紙]
東亜情勢判断と云ふべき戦略態勢の準拠
[本文]
【極秘】 15.6.23 総軍参謀部 東亜情勢判断に応ずべき世話略態勢の準拠
政戦略強力の一元指導、軍備充実計画の拘泥除去、対ソ政略実施、及び総軍の強力統帥を前提とし、情勢判断に応ずるの戦略態勢を左の如く考定す。
第一期 事変解決に関する努力
一、速に総軍戦闘序列(予定中のものをも含む)内に於ける転用に依り、漢口付近に約二個師団の機動予備を集結し、宣昌を拠点とする迫檄戦略を指導す。
二、南寧兵団を仏印進駐の準備態勢に部署す。
三、混明作戦準備のため可及的速度を以て満洲及び内地よりの転用をも含み総計5個師団の集結を促進す。
第2期 事変解決時期
四、急速に保障駐屯の地域に向ひ、兵力を整理す。
第3期 事変解決後の反転
五、現態勢に対し新たに十個師団の集結を準備し、之と在支抽出兵力とを以テ北辺の□一に備へつつ南経略を行ふ。 海軍は対米一戦を準備す。 支那軍は之を印度方面に前進、抑留せしむ。
六、事変解決の努力奏功せざるときは、前項の準備を以て<南北より>重慶に向ふ攻勢作戦を行ふ。此の際に於ける重慶会戦兵力は概ね十個師団とす。
本方略のため特に対ソ関係の調整を以て必須の要件となす。
[表紙]
東亜情勢判断と言うべき戦略態勢の準據 原本史料 一復史料 防衛研究所戰史室 中央 戦争指導 重要国策文書 966
[中表紙]
東亜情勢判断ト云フヘキ戦略態勢ノ準據
[本文]
【極秘】 一五、六、二三 總軍参謀部 東亜情勢判断ニ応スベキ戰略態勢ノ準據
政戰略 強力ノ一元指導、軍備充実計画ノ拘泥除去、対「ソ」政略実施、及 總軍ノ強力統帥ヲ前提トシ 情勢判断ニ応スルノ戰略態勢ヲ左ノ如ク考定ス
苐一期 事変解決ニ関スル努力
一、速ニ總軍戰斗序列(予定中ノモノヲモ含ム)内ニ於ケル轉用ニ依リ 漢口附近ニ約二個師団ノ機動予備ヲ集結シ 宣昌ヲ據奌トスル [×遊×] 迫檄戰略ヲ指導ス
二、南寧兵団ヲ拂印進駐ノ準備態勢ニ部署ス
三、混明作戰準備ノタメ可及的速度ヲ以テ <滿洲 及 内地ヨリノ轉用ヲモ含ミ> 總計五個师団ノ集結ヲ促進ス
苐二期 事変解決時期
四、急速ニ保障駐屯ノ [×線迄×] 地域ニ向ヒ 兵力ヲ整理ス
苐三期 事変解決後ノ反轉
五、現態勢ニ対シ 新ニ十個师団ノ集結ヲ準備シ 之ト在支抽出兵力トヲ以テ 北辺ノ□一ニ備ヘツヽ南方經略ヲ行フ
海軍ハ対米一戰ヲ準備ス 支那軍ハ之ヲ印度方面ニ前進 抑畄セシム
六、事変解決ノ努力 奏功セサルトキハ 前項ノ準備ヲ以テ <南北ヨリ> 重慶ニ向フ攻勢作戰ヲ行フ 此ノ際ニ於ケル重慶會战兵力ハ概 十個师団トス 本方略ノタメ特ニ対「ソ」関係ノ調整ヲ以テ必須ノ要件トナス
↑東亜情勢判断と言うべき戦略態勢の準拠(防衛省防衛研究所 中央-戦争指導重要国策文書-966) https://www.jacar.archives.go.jp/das/image/C12120139400 https://www.jacar.archives.go.jp/das/image/C12120139500